寸評・「沿線住民は眠れない ー京王線高架計画を地下化に」

首都圏交通事情(と言っても主に多摩地区)

 こんにちは、多摩雑報です。前回、の書籍を読み込み、読後の所感をupして行く旨を申し上げました。実は未だ全ページの読破には至っていません。が、大体の論点は絞れそうなので、今日はそれのみ、まとめて置きたいと思います。

 本書は2020年現在進行中である、京王電鉄の比較的都心部の高架立体化事業に対して、立体化の方式を高架では無く、地下化にすべし、という沿線住民の声を訴えるものである。著作者は沿線住民ではなく、日弁連に所属する弁護士・海渡雄一(かいどゆういち)氏と、プラント設計技術者の筒井哲郎(つついてつろう)氏両名で、協力団体として「京王線地下化実現訴訟の会」となっている。彼等が主張の主体者ということである。以下、海度・筒井両名殿には適宜敬称略とさせていただく。また「京王線地下化実現訴訟の会」については、「訴訟の会」とします。

 文章は本当に読みやすい。海渡氏、さすが弁護士さんである。筒井氏の文体も、技術論文のように論理的であり、曖昧さは殆ど感じられない。「訴訟の会」に代わっての執筆は、大成功と言って良いだろう。これが「会」の誰かであったら、もっと感情が全面に出てしまって、逆効果に陥るのは確実である。この両名、特に海渡氏でさえ、其れが見え隠れしているからだ。それでも原告側の、当初の計画である高架を地下化に変更せよ、との主張が単なる住民のエゴではなく、俯瞰的に精査した結果であり、十分な正当性を持つものであることを、しっかり押さえている。

 では読後、住民の訴えを受入れられるようになったのか、と言えば、さに非ず。否、主張の正当性以上に、やっぱり住民のエゴ、とまでは言わぬも、考証の浅さを指摘せずにはおれない。しかも、それは皮肉にも弁護士の筆運びによって暴露された結果になっている。今回の工事区間は、新宿・京王八王子間37.9㎞のうち、比較的都心部である笹塚駅西側、新宿駅起点約4㎞から仙川駅西側の新宿駅起点約12㎞の8㎞弱が工事区間となる。この工事では2つの駅が新たに優等列車の追越し設備が儲けられるため、朝のラッシュ時に於いて、相当な時短効果を生み出すことも大きなポイントなのだが、それについては全く一言も触れていないのである。つまり、工事区間沿線の住民たちよりも西側、つまり遠方の乗客は、工事が完成しないと相変わらず日本で一番ノロい通勤・通学が改善されないのだ。電鉄としては、開かずの踏切解消よりも、そちらの改善の方が重要なのである。

 実際に私がまさしく、そういう通勤・通学客であったから、この点に言及していないのならば、例えどんなに正しい訴えであっても「住民エゴ」にしか思われないのは仕方なかろう。遠方の乗客にとっては、都心部の踏切が開かずで有ろうが無かろうが、自分たちには関わる問題ではない。朝ラッシュ時の新宿への到達時間の時短化さえ叶えば、高架方式・地下方式どちらでも構わない。一番腹立たしいのは、ひたすら着工が出来ずに、現状のノロノロ運転が解消されないことである。それが対象工事区間沿線の住民の反対によって引き起こされている以上、相当な怨恨を抱かざるを得ない。海渡氏はこの問題を知らぬ、あるいは気付かぬはずはない。住民達の正当性を強調するために、敢えて論じていないのだ。だがハッキリ言おう。全くの逆効果である、と。

 最後に、この問題が起きた時からの疑問。高架推進母体と住民側が、ずっと対立していくならば、住民は現状で良いと思っておられるのであろうか、という事である。「高架化されてしまうくらいならば、このままが未だマシ」という事であれば、それは一つの見解である。遠方乗客にとってはどうでも良い事である。ウ~ン、不思議な方々だ。決してケンカしたいんじゃなくて、そこんとこ、意見を是非とも伺いたいと存じる。ではまた!

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