京王散策(1) 改軌問題

首都圏交通事情(と言っても主に多摩地区)

 こんにちは、多摩雑報です。京王電鉄が「先送りによる問題ムヤムヤ化の達人」たる事例をまず一点、ご紹介します。

♢改軌大作戦

 京王電鉄には「京王線」と「井の頭線」という、全く性格の異なる2つの路線がある。「京王線」は新宿⇔京王八王子間 37.9㎞ を結ぶ本線に、調布⇔橋本間 22.6㎞ の相模原線、北野⇔高尾山口間 8.6㎞ 高尾線から成る。調布は新宿から 15.5㎞、北野は 36.1㎞ の駅なので、本線は相模原線と高尾線の2本の支線を持っている、という扱いになる。一方の井の頭線は渋谷⇔吉祥寺間 12.8㎞ のみで、支線はない。京王線とは途中、京王線だと新宿起点 5.2㎞、井の頭線だと渋谷起点 5.1㎞ の明大前駅で交差・乗り換え駅となっている。

 すると渡り線を設ければお互いを行き来出来そうな気がするのだが、絶対にそれは出来ない、何故か?京王線と井の頭線とで、線路の幅が異なるからだ。一般に日本の鉄道のレール幅の大半は、 1067 ㎜ という、極めて狭い幅が採用されている。これはJRの元となる旧国鉄全線がそれに決めたからだ。全世界的には、1435㎜ が圧倒的に多い。だから此の線路幅を標準軌と呼び、其れより狭い1067㎜を狭軌と言う。井の頭線は狭軌、すなわち1067㎜なのだが、京王線はそれよりも広い。

「ふ~ん。じゃあ標準軌なんだね」と思いきや、何とそれとも違う。京王線は1372㎜なのだ。つまり狭軌よりも 305㎜ 広く、標準軌よりも 63㎜ 狭い、という事になる。標準軌でも狭軌でもないので、メイビー便宜上に過ぎないと思われるんだが、一応「偏軌」と呼ばれているようだ。かつては京王線で使った車両を井の頭線に転用する、とか、その逆も行われており、その際には、車両の車軸を変更しなければならなかった。また、偏軌は極めてレアな幅だから、京王線の車両を他の鉄道会社が購入する場合も同様の作業が必要になってしまう。本当は1946年に京王線と井の頭線を合併させた際、どちらかに統一するべきだった。実際に太平洋戦争中は下北沢駅付近で、小田急線と井の頭線との間を結ぶ渡り線が存在していた時もあった。が、「しなくても良いんじゃね?」という、投資イヤイヤ主義を貫き、今日に至っているわけである。

 が、世の中そんなに甘いもんじゃおまへん、もっと真面目にやれ~~~と、勧告を受けた時期がある。都営地下鉄新宿線と線路を繋げて、相互乗り入れ運転することになった時、都営側が1435㎜幅を要求してきたのだ。理由は明快である。先行して営業していた都営浅草線が標準軌であり、三田線は狭軌だったからだ。そして新宿線と浅草線は、両線が交わる馬喰横山駅付近で、双方を行き来するための渡り線を予定、これによって、車両基地のスペースを稼ごうという思惑があった。で、言われた京王は一応、「はい分かりました。では改軌を検討します。」と、ハッキリ都営交通局にも監督庁である運輸省(交通産業省)にも回答した。が、その返事をずっと出さず、いよいよ新宿線と線路を繋げるギリギリの段階になって、「いやあ一所懸命に改軌を検討しましたが、通常運行を妨げずにやるのは無理と結論しました。」と、悪びれず、努力したけどダメでした、と返答したのだ。つまり、京王の極々特殊な規格を、新宿線は採用せざるを得なくなったのである。

 新宿線側すなわち都営交通局が激怒したのは言うまでもない。京成電鉄も本来は京王と同じ偏軌の1372㎜だった。それが浅草線と乗入れを開始する際、ゆくゆくは京浜急行電鉄とも繋がるので、1435㎜への改軌を実施したのだ。また、新宿線の建設は、相互乗り入れのために京王の改軌が前提で進められたのである。この「検討しました。」とか「努力しました。」→ 「でも出来ませんでした」という、中二病気質は、至るところで発揮される。

 「ではどうしろ、というのですか?こんな高密度運転を営業しながら出来っこないことを要求する方が悪い。」とでも思っているのか。では言おう。都営側は1435㎜で敷設を敢行すべきだった。乗入れは出来ないから、新宿駅で乗り換え→不便→乗客が苦情という流れになるから、京王がやらざるを得ない所まで追い込むべきだった。今年は両方の線路が繋がって丁度40周年である。が、最初からボタンを掛け違えた両者は、いがみ合ったままの運行により、ずっと乗客の迷惑を顧みないままだ。

 京王は、「改軌なんていう手間もカネもかかる作業をヤルくらいなら、つなげないで下さい。」と、本音を言わない。これについて、ハッキリ申し上げよう、ウソをついているのと同然である。どうせ新宿までは都営側の工事である。自分が何か工面する必要はない。そして改軌という「義務」を放棄し、「地下鉄直通運転」という見た目の良い名誉だけはしっかり欲しいのだ。あれ、これって或る政党の考え方に酷似してるな。よし、次回はその政党とともに歩む京王の八方美人ぶりを取上げよう。ではまた!

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